高知で空き家のご相談をいただくとき、私たちはいきなり「宿にしましょう」とは申し上げません。建物にも、まちの立地にも、それぞれ向き不向きがあるからです。まずは選択肢を並べるところから始めます。
1. 一般賃貸——住まいとして貸す
もっとも素直な出口です。入居者が決まれば毎月の家賃が安定して入り、運営の手間もほとんどかかりません。一方で、いったん貸すと借主の居住権が強く保護されるため、貸主の都合で契約を終わらせるのは簡単ではないとされています。将来この家を自分で使いたい、あるいは別の形に変えたいという可能性が残るなら、契約の型を最初によく考える必要があります。また、水回りが古い家や広すぎる日本家屋は、そもそも借り手がつきにくいという現実もあります。
一棟貸しは「家の物語ごと、旅の人に開く」。
2. 一棟貸しの宿——旅の人に開く
もうひとつが、宿泊施設として使ってもらう道です。日々の稼働に応じて収益が変わるため、賃貸のような安定感はありません。許可の取得や消防設備、開業までの準備も必要です。それでも私たちがこの道をおすすめしたくなる理由は二つあります。ひとつは、古い日本家屋の欄間や土間といった「住まいとしては不便な個性」が、宿では価値そのものになること。もうひとつは、家がまちに開かれ、訪れた人が近くの店で食事をし、朝のまちを歩くことで、その家が地域の入口になることです。
どちらを選ぶかに、正解はありません。安定を最優先するなら賃貸ですし、建物の個性が際立っているなら宿という道が生きてきます。私たちは診断の段階で両方をテーブルに並べ、宿が向かない場合はその旨も正直にお伝えします。そのうえで宿を選ばれた方とは、開業して終わりではなく、季節ごとの稼働を一緒に見ながら長く育てていく——そういうお付き合いを前提にしています。
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